『アルツハイマー病 真実と終焉』を解説(8):インスリン抵抗性を改善する(生活習慣の改善によりアルツハイマー病を治療)

前の記事糖は依存性の毒 ==> インスリン抵抗性を改善する治療方法)の続きです。

アルツハイマー病の予防および治療のために、必要な生活習慣の改善について説明します。

第8章 リコード法 認知機能を回復する』に書かれている、アルツハイマー病(認知症)の治療方法は、

インスリン抵抗性を改善する

DESSと呼ばれるコンビネーションの実行

食生活、運動、睡眠を改善し、ストレス軽減する。

【食生活】

アルツハイマー病にならないための食生活:ケトフレックス12/3

 1.ケト:体が脂肪を燃焼する軽いケトーシス状態に!(P.264)

ケト」は「ケトーシス」を指す。ケトーシスは肝臓が脂肪を分解し、ケトン体※1)と呼ばれる特有の化学物質を産生するプロセスである。この状態は、身体の一番のエネルギー源である炭水化物が足りなくなると起こる。軽いケトーシス状態認知機能には最適ということが明らかになっている。

※1 アセトアセテート、β-ヒドロキン酪酸、アセトン)

とりわけ、β-ヒドロキン酪酸は、ニューロンシナプス支える重要な分子である、BDNF脳由来神経栄養因子)の産生を増やす

ケトーシスを促進するためには、

① 低炭水化物食
② 適度な運動
③ 少なくとも12時間の絶食

…糖類、パン、ジャガイモ、白米、ソフトドリンク、アルコール、キャンディー、ケーキ、加工食品などの単純炭水化物食品の摂取を最小限にする。
…早歩きやもっと激しい運動を1週間に150分以上
…その日の最後の食事と、次の日の朝の最初の食事まで少なくとも12時間空けること。詳しくはこの後説明

3つを組み合わせる必要がある。

MCTオイル※2)などの脂肪やオリーブオイルアボカドナッツなどの不飽和脂肪を摂っても軽度のケトーシスが促進される。

※2 中鎖脂肪酸トリグリセリド オイル[中鎖脂肪酸トリグリセリド100%のオイル。サラダ油など一般的な油に比べて炭素原子の数が少なく、体内でより速やかに代謝され、エネルギーになりやすい])

これにより、アルツハイマー病を促進する炭水化物燃焼インスリン抵抗性モードから、逆に予防効果が期待できる、脂肪燃焼インスリン感受性モード代謝を切り替えられる。『認知力は代謝に左右される』

 2.フレックス:穏やかな菜食主義(flexitarian diet)を目指す

これは、主に植物を基本とした食事で、特に非でんぷん質の野菜に焦点をおいている。

深緑から鮮やかな黄色やオレンジなど、できるだけ彩り鮮やかな野菜を、サラダなどの調理しないものと、調理したもの混ぜることが最適である。

多少の魚、鶏、肉もよいが、メインディッシュではなく、薬味として加えること。一番よいのは、1日に数十グラムなど、消費を制限することである。

目安として、体重1kgあたり1gのタンパク質を消費するとよい。体重70kgだとすると、70gのタンパク質を摂取するのが理想的だ。例えば、魚約85gには約20gのタンパク質が含まれている。

 3.12/3:朝ごはんまで12時間空ける、夜ごはんは就寝3時間前まで

「12」は、その日の最後の食事と、次の日の最初の食事、あるいはスナックとの間に空ける時間のことである。ただしAPoE4遺伝子を持つ人は、厳しいようだが14~16時間を目安にすべきである。つまり、8時に夕食を終えたら、次の日の朝10時まで朝食を控えるということだ。

「3」は、夕食終了時間と就寝時間を、少なくとも3時間空けるという意味だ。つまり、就寝時間が午後11時の人は、夜8時には夕食を済ませ、それ以降はスナック類も食べないようにする。これを守ることで、就寝前にインスリン値が急上昇することを防ぐ。

インスリン値の急上昇は、インスリン抵抗性の原因となるだけでなく、睡眠や免疫機能に役立つメラトニンや成長ホルモンも抑制してしまい、体の修復もできなくなる。

12~16時間の絶食のもうひとつの大きな効果は、(脳細胞も含めた)細胞を構成する成分をリサイクルし、ダメージを受けたタンパク質やミトコンドリアを破壊する、自食作用を促すことである。これが細胞の再生にとてもよい。

また、絶食は、ブドウ糖を貯蔵し肝臓に蓄積していたコラーゲンを激減させる。これにより、ケトーシスを導く役に立つ。

最後に、絶食はケトーシスを促進する。絶食後は、解毒水としてレモン水(氷なし)から飲み始めるとよい(レモンは、肝臓への刺激やビタミンCの供給など、いくつかの機能を果たしながら解毒にも役立つ)。

 4.リーキーガットを予防し、腸内フローラ(微生物叢)を最適化する

ほとんどの人にとって、これはグルテン乳製品など過敏性が出る食品を避けることを意味する。過敏性のある食品はリーキーガット※3)の一因となり、結果として炎症の原因となる。

リーキーガットから回復したら、プロバイオティクスやプレバイオティクスで腸内フローラ(微生物叢)を最適化する。

※3 腸漏れ症候群腸の粘膜に穴が空いてしまい、本来排除されるはずの有害物質(毒素)が体内に取り込まれてしまう。)

ケトフレックス12/3が理解できたところで、更に詳細14項目を、後の記事で説明します。

 

【運動】

定期的な運動には、メリットがたくさん!

『座ったままの姿勢は、新たな喫煙だ!』

運動が有益であるだけでなく、「座ること」が認知力や、体の特に心血管系の健康に致命的であるという研究結果がある。

    1. 運動は、アルツハイマー病の進行に重大な役割を果たすインスリン抵抗性を減少させる。
    2. とりわけ、ニューロンを支える分子である脳由来神経栄養因子(BDNF)の生産を増やすケトーシスを促進する。
    3. 記憶を司り、アルツハイマー病において萎縮する海馬を大きくする。
    4. ニューロンやシナプスの健康に不可欠な血管機能を改善する。
    5. アルツハイマー病を促進する、炎症の重要な引き金となるストレスを軽減する。
    6. 認知力の健康に欠かせないもうひとつの要素、睡眠を改善する。
    7. ニューロン新生と呼ばれる脳のプロセスで産生される、生まれたばかりのニューロンの生存率を高める。
    8. 気分を改善する。

認知力に最適な運動として、ジョギング、ウォーキング、スピン、ダンスなどのエアロビクスと、ウェイトトレーニングをミックスするとよい。1日あたり45~60分、週に4~5回は取り組みたい。始めるときはゆっくりと、体を伸ばし、関節にも注意すること。もちろん、このプロトコルを行うことにより炎症が減少し、関節の不調も改善されるはずである。

【睡眠】

これでぐっすり! 熟睡!

    1. 検査結果により睡眠時無呼吸が特定されれば、その治療が必須である。
    2. できるだけ1日8時間に近い睡眠を心がけ、(認知機能を損なわせうる)睡眠薬は使わないようにする。
    3. 質のよい睡眠のための環境を整える
      • できるだけ部屋を暗くする。必要なら、睡眠マスクを使用する。
      • できるだけ静かな環境を保つ。
      • 寝る前はくつろぐ。
      • できるだけ夜中の12時をまわる前に寝る。
      • 就寝の数時間前は、運動を避ける。
      • 日中の早いうちに運動すること。
      • ブルーライト(一般的なライト)を避ける。
      • カフェインなどの刺激物は午後早いうちから飲まないようにする。
      • ベッドルームにテレビは置かない。
      • 夕食は軽めに済ます。
      • 水分補給をする。
【ストレス低減】

ストレスの驚くべき影響(P.288)

ストレスとは体のシステムを本来管理するレベルを超えたところで、維持している状態をいう。私たち人間は、糖分の多い食事を摂り、白熱電灯を灯して、深夜まで起きる生活を送るように進化していない。また仕事に対しては常に不安を抱きよく眠れず栄養状態は悪く、何百という毒性の化学物質にさらされ、脳や体を猛撃するこうしたさまざまなストレス要因にさらされている。私たちは、断続的なストレスに対応するように進化したのであって、常に続いていては、体がもたない。

ストレスは、コルチゾール※4)の数値を上昇させる。コルチゾールは、数値が高いと脳に有毒である。特に、アルツハイマー病により衝撃を受ける、最初の構造の一つでもあり、記憶を固定する役割を果たす海馬への影響が大きい。

※4(P.197) ストレスは、HPAアクシス(視床下部下垂体副腎皮質軸)を活性化させる。脳の視床下部は、ACTH副腎皮質刺激ホルモン)を血液に放出させる、脳下垂体を刺激するコルチコトロピン放出因子(CRF)を産生する。ACTHは、次に、腎臓上の副腎ストレスホルモンであるコルチゾールや、ほかのストレス関連ホルモンを放出させる。コルチゾールが高いと、ニューロンに損傷を与え、特に海馬で、慢性ストレスが海馬損傷の重要な原因となり、このため認知機能と、特に記憶力が低下する。

またストレスは認知機能低下や、アルツハイマー病のリスク因子※5の数も増やす。また、アルツハイマー病から脳を保護する要素、例えば、ニューロン新生や記憶形成に関連する気状突起棘(きじょうとっききょく)の成長と維持など、シナプス破壊要因に負けないように格闘するシナプス保存要因をも攻撃する。

※5 血糖値、体脂肪、肥満リスク、炭水化物が欲しくてたまらなくなること、リーキーガット、その結果としての炎症、血液脳関門の透過性、カルシウムの放出、神経への過剰な刺激、心血管疾患リスクなど

ストレス軽減は、認知力の最適化プログラムの中で非常に重要

最善の方法は人それぞれ違うが、多くの患者にとって、コルチゾールを低下させ、海馬の萎縮を防ぎ大脳皮質の厚みを増やす働きをする瞑想ヨガは、強力なストレス軽減法と言える。

非常に簡単なのに、驚くほどあまり利用されていないストレス軽減法は、横隔膜から(胸からではなくお腹から深く、ゆっくりと数回呼吸することである。

リラックスしよう! 運動後、やりすぎた感がある場合は、少し減らしてみることも大切だ。つまり、45分の運動を30分にしたり、ランニングマシンの速度を遅くしてみたりするのだ。

心拍数を上げたり、ウェイトトレーニングをしたりするのはよくても、マラソントレーニングでストレスを感じる場合は、運動を減らすことによって、コルチゾール値を下げられるかもしれない。

カフェイン愛好家は、量を減らせば、ストレスレベルを下げられることができるだろう。アルコールも同じことが言える。マッサージ笑うこと音楽動くこと、これらはみな、ストレス軽減の素晴らしい方法である。

いやいや、専門用語が難しいですね、、、